2020年からコロナ禍により多くの飲食店がテイクアウトやデリバリーでの販売に販路を広げました。更に在宅での仕事が日常となったことにより店舗に出向く回数が減りました。それを回避をするようにオンラインショップ、通販を始める店舗も増えました。しかし、飲食店を開業するにあたり営業許可証が必要ですが、この『飲食店営業許可証』での通販は出来ません。
僕自身、最初はこの部分が良く理解が出来ていませんでした。極わずかな時間でしたがテイクアウトで不可のお料理を販売してしまったこともありました。勉強不足と理解をしたので春の緊急事態宣言時に保健所に週に2~3回ほど通い、テイクアウトやデリバリー、通販に関してなど本当にしつこいほど質問をして確認をしながら進めていました。なので何もしていなかった店舗が急に通販などを始めるのを非常に怖いと思っています。
少し飲食店に関する免許について書いてみたいと思います。
一般食堂、料理店、すし屋、そば屋、旅館、仕出し屋、弁当屋、レストラン、カフェー、バー、キャバレーその他食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業のこと。
引用:許認可ドットコム
飲食店を開業をするのに必要な許可証です。フレンチ、イタリアン、懐石、割烹、小料理屋、そいてパブもです。一般的に飲食店と言われる店舗には必要な許可証です。
飲食店開業にあたっては食品衛生責任者がいて、開業店舗を所轄の保健所の方にチェックをしてもらい合格をもらえれば飲食店としての営業が可能になります。別に調理師免許は必要はありません。必要なのは食品衛生責任者です。ちなみに調理師免許保有者はそれだけで食品衛生責任者としての資格を持っています。
パン、餅菓子、ケーキ、飴菓子、干菓子等通例概念による菓子又はチューインガムを製造する営業を始めるときに必要な許可です。
引用:許認可ドットコム
お菓子にも許可証が必要なんです。ちょっと複雑なのですが、飲食店は分類では『調理業』です。お菓子屋さんは『製造業』です。この大きな分類が違います。飲食店でもデザートを提供していると思いますが、あれはあくまでも店内での飲食だからです。少し分類を書きます。
1:ケーキの持ち帰りのみ → 菓子製造業許可のみ
2:ケーキの持ち帰りとイートイン → 菓子製造業許可と飲食店営業許可の2つ
3:飲食店で提供するケーキ → 飲食店営業許可のみ
このような規定があります。先にも書いた飲食店でのケーキの提供ですが、飲食店営業許可のできることについて「食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業のこと。」となっています。つまりケーキの調理も食品を調理するに含まれるからです。しかし、ここで飲食店が気を付けなければならないのが飲食店でお持ち帰り用のケーキを販売する場合は、菓子製造業許可が必要になる場合があるということです。
鳥獣の生肉(骨及び臓器を含む。)を販売する営業を始めるときに必要な許可です
引用:許認可ドットコム
ハム、ソーセージ、ベーコン、その他これらに類するものを製造する営業のことを言います。飲食店がハムやソーセージ、ベーコンを製造販売してはいけないということです。ここが一番複雑で難しい部分です。
分かりやすく解説をします。ラーメン屋さんのチャーシューが非常に分かりやすいです。まず、ラーメン屋さんは飲食店なので『飲食店営業許可』です。そしてチャーシューですが、これは『食肉製品製造業許可』になります。この食肉製品製造業というのは飲食店にとっては非常に難しくハードルが高い許可です。まず、製造業なので調理場とは別の工場(部屋)が必要になります。これは生肉等を扱うために衛生に注意をしないといけません。もし調理場と同じところで食肉の作業をしていると、異物混入の可能性が高くなるということです。さらに飲食店開業に必要なものに『食品衛生責任者』と言いました。食肉に関しては『食品衛生管理者』という時間もお金も要する許可を持つ資格を保有しないといけません。食肉店で2年間勤務、その後講習を36万ほどで受ける。このような難関がありるので現実的ではありません。
ではなぜ、ラーメン屋さんでチャーシューを作って販売をしているかと言うと『対面販売』なので飲食店営業許可で可能ということです。もし、これを他店へ持って行ったり店舗外で販売をする場合には、超難関の食肉製品製造業許可が必要になります。
このように飲食店というだけで何でも可能かと言うと決してそうでは無いということです。このコロナ禍で多くの飲食店が生き延びるために取った様々な販売方法ですが全て許可を取って行っているという店舗は非常に少ないと思います。なぜならお金もかかり面倒だからです。僕は自分で解決をするために保健所に通い情報を得て色々と勉強をして菓子製造、食肉販売、そうざい製造、この3つの許可証をスコッツマンという店舗内で取得をしました。
通販と言うのは僕はまだまだ不安で非常に怖いという気持ちが強いです。理由は調理場で作ったものを時間と流通というものを経過して購入者様に届くからです。衛生という部分で非常に怖いと考えています。流通で何かあったら・・・届いたものの箱が潰れていたら・・・などなど流通と時間により調理後のに店内で提供するものと違ってしまうという事実があります。それをどうやって美味しく安全に店舗で食べるようなものに仕上げるかをいつも考えています。
そして飲食店営業許可では通販は出来ません。お菓子を通販するのなら『菓子製造』、お肉を通販するのなら『食肉販売』、料理を通販するのなら『そうざい製造』、これらが必要だということです。店舗で提供しているかぎり可能な料理を届けるために許可証を取得しました。
食品を通販するためにとても大切なものがあります。それが『食品表示』です。スーパーで食品を購入するときに値段が書いてありますが、値段以外に産地、カロリー等、総重量、賞味期限などの情報を記載しているシールがありますが、そのシールを作成し貼る必要があります。このコロナ禍の中で僕は通販を始めた店舗の商品をネット注文し購入をしました。これはちゃんとしているかどうかを自分で確認をするためです。やっていない飲食店ばかりでした。
この食品表示もやったことが無いので書き方など全く分かりませんでした。なので保健所に出向き、自分が販売をしたい商品の食品表示を作り持って行き確認をしてもらい訂正箇所を教えてもらい進めて確認を取っています。まだ凄く心配な部分です。なぜ、僕がこの通販にシビアかと言うと『飲食で人を殺せる』と僕は思っているからです。数年前のレバー事件を覚えている方は多いと思います。ずさんな調理工程、食品管理により人的要因の事件でした。あの事件が頭に浮かぶので食品を流通に乗せるの部分にあたり時間をかけて確認を取っているため、まだ通販が出来ていない状態です。ですが、通販をするためにオンラインショップ構築もしています。今は商品登録の段階です。この商品ページにも正確な情報を掲載することが必要です。
この食品表示はカロリーや糖分などの数字の掲載も必要なので計算が必要になります。こういう部分もちゃんと表示をしないといけません。
そして命にかかわることで『アレルゲン表示』があります。特定材料の、えび・かに・小麦・そば・卵・乳・落花生、これらの表示の他に特定材料に準ずるものがあります。あわび・いか・オレンジやごま、鮭や鯖、リンゴなんかもあります。こういう食材は調理場では当たり前に使う食材です。えび・カニを扱ったまな板で、洗わずにそのまま野菜を切って料理して、その野菜料理を食べた方がエビ・カニを食べていないのにアレルギーが発生することもあります。それはエビ・カニのまな板を洗っていないということもありますが、まな板を分けていないということも上げられます。
このようにアレルギー表示は人命に関わる大切な表示です。でも、書いていない。面倒だから、分からないからというのは通用しません。勉強をすれば良いだけです。
今回のコロナ禍で飲食を取り巻く環境は大きく変わりました。その中での活路としてのテイクアウト、デリバリー、そしてオンラインショップですが、これまで飲食店としてのみ事業をしてきた店舗であれば、それぞれ許可が必要になります。無許可は許されません。
それ以前に、僕たち飲食店を仕事をするものは『人命を預かっている』という意識の元、食材の安全管理に努める義務があります。食中毒も問題ですが、自分が作ったもので購入者様が病気になったり、最悪、命を失う可能性のあるものを日常的に取り扱っているということを再確認しないといけません。
通販をするにしても、きちんと所轄の保健所に出向き担当の方と必要なことを聞き、しっかりとした対応をして取り組めば取得が出来る許可があるかもしれません。行くのが面倒とか、手続き面倒とかそういう低次元での話ではなく。限られた店舗で何ができるかを考えて保健所に相談に行けば色々と教えてもらえます。お酒がメインのバーでも菓子製造業を取得し、バーテンダーさんのお酒とスイーツのマリアージュが楽しめるようなセットを考え、お客様を楽しませてくれる方もいます。『できない!』では無く『何ができるんだ!?』というプラスの発想から考えれば必ず活路が見いだせると思い、僕自身も取り組んでいます。このような苦境はそうやってきません。だからこそ足元をしっかり見て必要なものを揃えるようにして、多くのお客様に喜んでいただける店舗づくりを心がけたいです。