神楽坂で2011年にスコティッユパブ「ザ・ロイヤルスコッツマン」を開業しながら、2021年より無農薬農業を始め、食を通じての体験や考えをまとめたブログです。食育インストラクターでもありオーガニックの普及に努める。国内では珍しいスコットランドの民族楽器バグパイプ奏者で全国のビールやウイスキーのイベントでの演奏も行っています

伝統と文化、そして伝統文化について


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2023年5月6日(土)にイギリスで新国王チャールズ3世の戴冠式が取り行われました。スコッツマンでもリアルタイムでの放送をし、その日のために考案された料理「コロネーション・キッシュ」を作ります。という投稿をSNSでしたところ、思った以上に多くの反応を頂き、数日前に告知したにもかかわらず問い合わせを多くいただきあっという間に満席になりました。

放送当日も多くのお電話を頂きましたが既に満席ということを伝えてお断りをしたり、直接来店をしてくれた方にも状況を伝えてと反響の大きさに驚きました。

歴史的な瞬間をその場の方々で見ていましたが、ふと「伝統」「文化」という言葉が頭に浮かび、営業後に考えていました。

伝統

神社

【 伝統 】

ある民族や社会・団体が長い歴史を通じて培い、伝えて来た信仰・風習・制度・思想・学問・芸術など。特にそれらの中心をなす精神的在り方。

引用元:広辞苑

広辞苑では上記のように伝統という言葉について解説をしています。分かりやすく言い変えるとこのようになると思います。

とも

個々の民族や地域などで、長い歴史の中で伝えてきた信仰や風習、それに関わるしきたりや制度。世代を超えて受け継がれながら形成されるもの、受け継ごうとする精神。

例えば落語や歌舞伎などが分かりやすいかもしれません。昔の人が始めたものを誰かが受け継ぎ同じように見せます。今度はそれを見て「素晴らしい」とか「自分もやりたい」と思う人が出てきて、また同じようにそれを繰り返します、それが昔から現代まで伝わってきています。

落語や歌舞伎だけでなく、工芸品もそうですし、衣装なんかもあります。日本という小さい島国にも関わらず、地方の大小さまざまな地域での特徴になっているものが多くあります。

そして、これから説明をする【 文化 】と大きな差がありるとすれば、「伝統は歴史的であって、時間経過も長く、古くから伝わっているもの」ということになります。では【 文化 】にについてです。

文化

大仏

伝統と同じように広辞苑で調べてみます。



【 文化 】

①文徳で民を教化すること。

②世の中が開けて生活が便利になること。文明開化。

③(culture)人間が自然に手を加えて形成してきた物心両面の成果。衣食住をはじめ科学・技術・学問・芸術・道徳・宗教・政治など生活形成の様式と内容とを含む。文明とほぼ同義に用いられることが多いが、西洋では人間の精神的生活にかかわるものを文化と呼び、技術的発展のニュアンスが強い文明と区別する。

引用元:広辞苑

これまた複雑な言い方のように思うので簡単に言うとこういうことなのかな。

とも

僕たち人間が作り出してきた生活や価値観で、それで生み出されたもので、日々、そして日常的に触れているモノの全てのこと。

今、自分がしていること、これからしたいことなど、「今の状況よりもっと良くしたい!」そう思って活動をすれば、それだけで新しい文化が生み出されていきます。

ハッキリとした形で目に見えないけど、現時点で自分が置かれている生活環境を形成をして、一般的な考え方や精神的なこと、それぞれの嗜好、時代によって変化・発展していくモノ。サブカルチャーや音楽、アニメなど。昔は存在していなかったけど、生活をして行く中で、身の回りにあって当然となったモノは文化に当たります。

【 伝統 】と【 文化 】の違い

上記で説明をした伝統と文化。似たような意味合いで使われるため、それぞれを掘り下げて考えることは無かったんですが、あきらかに決定的な違いがあります。

【 伝統 】 長い歴史の中で受け継がれてきたもの

【 文化 】 その国の生活で生み出され定着しているもの

この2つは変化をするかしないかという大きな違いがあります。

伝統文化

日本庭園

日本は歴史が古く、多くの伝統や文化が残っている国と言われ、海外の方はそれに触れて感動をして本国に帰って日本の素晴らしさに改めて気が付く。といようなことを聞いたりしたこともあると思います。実際に、その様な体験を本人自らYouTubeで発信をしている海外の方が多くいることにも驚きます。

それと同時に伝統職などは後継者不足で伝えられてきた伝統が廃れてしまうと危惧されている部分もあります。

島国である日本は独特の文化が残る国です。鎖国をして海外の侵入を嫌いながらも開国をすると、一気に西洋文化が独特に付け加えられ華やかな和洋折衷という文化も誕生しました。非常に強い影響を受けたにもかかわらず日本は独自の発展を遂げたようにも思います。

この「伝統文化」という文字は「伝統」という言葉と「文化」という言葉。2つの言葉によりできているというのは分かりますが「変化をするかしないか」という大きな違いがあるにもかかわらず、なぜ一緒の言葉として使用されているかを不思議に思いました。

とも

【 伝統文化 】= これまでの長い歴史の中で生み出され、つちかわれ、現代の人々に受けつがれてきた文化。

こういうことではないのでしょうか?

伝統という歴史的な観点からも、現代にまで受け継がれてきたモノ・コトを、現代人でもある僕たちの生活の中では定着をして、今後も受け継がれていくモノ・コト。

日本は島国です。そして四季折々の自然豊かな国です。

日本の伝統文化は、「禅」や「わびさび」といった精神的概念の影響を大きく受けています。あのスティーブン・ジョブズを始め多くの有名企業経営者が生活の中に禅の精神を取り入れているといるというのは有名な話です。

もともと禅は、中国から日本に伝わった禅宗のことです。精神統一した人間らしい生き方を目指しています。そこに日本人的な、自然に逆らわず、すべてを自然の流れに重んずるという思想を持ち合わせています。それらの世界に類を見ない精神が武道や茶道、書道などのさまざまな伝統文化に影響を与えてきました。

例えばですが「死」については大きく西洋文化とは概念が違います。西洋では魂は永遠性の肉体を求め再生されるものであるという思想を持って文化が築き上げられてきました。それゆえにミイラであったりピラミッドを作りました。

日本では、死に対しては動物のありのままの姿として日本文化を築いています。命はいつか無くなるということは自然のことだからです。それに逆らうようなことはしません。

そして、よく使われる「わびさび」という言葉は、派手さのない落ち着いている美しさを表します。日本建築や日本庭園など、趣や味わいを感じられるようにあえて質素にしている伝統文化もあります。

英国の戴冠式では、いたるところに金が使われ、派手な装飾がされ、その華やかさが繁栄の象徴というべきものだと実感をしました。

日常に溶け込む伝統文化

茶道具

今回の戴冠式は今一度、自分のいる日本という国を考え直すのに良い機会になりました。

日本の伝統文化は普段送っている何気ない生活の中に溶け込んでいるものが多いことを再確認しました。少し前になりますが桜が咲き、コロナ禍の終息目前ということで全国区で花見が行われました。インターネットがどれだけ発展しても日本では桜が咲くと花見という風情を楽しむ人たちは絶えることはないと思います。

日本独特の考え方である『いただきます』『ご馳走さま』『おかげさま』や『もったいない』という考え方や姿勢も、長い日本の歴史のなかでつちかわれてきた大切な『伝統文化』の1つだと僕は考えます。

色々とある伝統文化ですが、僕は十代の頃より生活に密着している『 衣食住 』の『 食文化 』に関わっています。日本の食文化と言えば和食ですが、僕は和食ではなく洋食をしています。現在は英国文化のパブですが、それまではフランス料理でした。

庭園、温泉、着物、建築物、家の中にある畳や襖も伝統文化です。そしてこれらの日本の伝統文化は伝統工芸としての質の高さも世界から賞賛を得ていますが、日本の伝統文化の多くは次世代の担い手がいなく、その文化の保守や継承が非常に困難になりつつあるのが現状です。インターネットの急速な発達や娯楽の増加によって、伝統文化に興味を持つ人が少なくなっているのが要因のひとつとも言われています。

しかし、そんなインターネットが日本の伝統文化を再確認する手段になっているのも現実です。YouTubeで職人さんの技術を録画したものや、海外の方の日本の伝統文化体験動画など、非常に多くの動画コンテンツがあります。特に職人の方の動画などは余計な音は無いにもかかわらず、その細かさや臨場感、息遣いまで伝わってくるような動画まであります。そのような動画コンテンツだけでなく地方自治体では町おこしに伝統文化を活用し、周知と地域の発展を両立させるような取り組みも盛んに行われてきているため、観光として触れやすくなりました。畑の近くには焼き物で有名な益子焼があります。高校の同級生がやっているので会いに行ってみようかなと思いました。

食文化としての農文化とまとめ

いただきます

最後になりますが、農業に関しても少し書いて、まとめに入ります。

畑のある市貝町。サシバが生息をする里山として静かな時間が流れています。農薬や化学肥料は使用せず自然に寄り添う農業をしていますが、今風に言えば環境循環型農業とか環境再生型農業と言い、世界的はこれをSDG’sの1つとして考えられて取り組むべき項目になっています。

でも、これは一部であって生活ということで考えるのであれば、その地域の風土や食文化のための鳥獣害対策なども、その1つになります。

僕たち日本人の性格や、行動は昔からの日本文化が現代でも影響しているのは間違いありません。周りを海に囲まれた島国だからこそ、他国と接する機会が少ない日本では、習慣、食生活、思考パターンなどのあらゆる文化も独自で発展、継承、進化をしてきました。

【 伝統 】と【 文化 】は次世代に受け継がれていくべき大切なものです。そのためには今、この世に生きている日本人が継承をしていくしかありません。

茶道は、お茶を飲むという文化のひとつです。でも、ただお茶を飲むわけではありません。飲物なら缶コヒーでもスタバでも良いという訳では決してありません。お茶をたて、相手を歓迎し思いやる心(思いやり)、ものを大切にあつかう心、美を楽しむ心など、茶室の中ではその外見からは思いもよらない深い精神世界があります。

そういう【 心 】を楽しむことも、日本の伝統文化のひとつであり、それが特徴で、だからこそ海外の方が感じる日本らしさなんだろうと思います。「日本人の心」は、決して忘れ去られてよいものではありません。ご先祖様や先人が守り続けてきた「日本人の心」を僕自身も大切に受け継いでいきたいものです。

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