神楽坂で2011年にスコティッユパブ「ザ・ロイヤルスコッツマン」を開業しながら、2021年より無農薬農業を始め、食を通じての体験や考えをまとめたブログです。食育インストラクターでもありオーガニックの普及に努める。国内では珍しいスコットランドの民族楽器バグパイプ奏者で全国のビールやウイスキーのイベントでの演奏も行っています

肥料となる「もみがらぼかし」の作成(前半)


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もみがらぼかしの完成

もみがらぼかし400kg

2月末から作成を始めた「もみがらぼかし」人生で初めて肥料を作り4月1日に作り終えました。製作日数36日。畑を無農薬で育てていくので、当然のことながら肥料も無農薬です。そして400kgという量を一人で作り終えて思うことがあります。

材料をそろえる場所の確保

もみがら、米ぬか

農業をやったことの無い僕としては、まず肥料を作るにしても、その材料を何処で入手する、購入するのかが全く分かりませんでした。毎月1回の講習を受けながら即実践モードで突入をしましたが、生活拠点は東京神楽坂、畑は栃木県小山市、電車で1時間20分、駅についてから車で25分、2時間弱の移動距離も問題になることは予想をしていました。

基本的に畑の確保自体も、とにかく現地付近で農家さんに聞いて尋ねての繰り返しをしましたが、肥料に関しては「もみがら」「米ぬか」と分かっていたので各県に、市町村にあるライスセンターに電話をしましたが、稲刈りの時期もすでに終わっていたので、街の米屋さん等にも同時に東京から電話をして確保にあたりました。

もみがら、米ぬか双方を合わせて400kgが1回の仕込み量なので足らないとまずいと思い多めに集めました。

材料の確保をしながら今後のことも考え、ライスセンターや米屋さんにも話をしながら進めました。

もみがらぼかし仕込み開始(1日目)

もみがら
米ぬか
もみがらぼかし1

一番左にブルーシートを敷いて、もみがら&米ぬかを山のように載せていますが、このブルーシートは1辺が3mはあります。これでも作業をするのには狭さを感じました。どんどんと混ぜ込んで行きたいのですがシートからはみ出したりするのでこまめな動きを幾度となく繰り返しながらスコップで混ぜ込むということが必要でした。

この経緯からも大きな、もみがらぼかし専用の小屋というかビニールハウスのような建物が必要と感じました。
今後、畑の拡張というものも計画をしていますが、今年を「1(0.5反)」としたら来年は「6(3反)」、再来年は来年の「6」の「3倍ちょい(1町)」という計画でいます。つまり、それだけ肥料となる「もみがらぼかし」の量も増えます。単位も「kg」ではなく・・・「t(トン)」になります!

必要な材料を混ぜ込みながら「発酵」という過程を経て完成をするので空気が必要になってくるので穴の開いたパイプを山の途中に入れながら持って行きます。

暗渠パイプで空気を確保
6時間で完成

もみがらぼかし仕込み開始(5日目)

乾燥部分
微生物が働き始めています
中の温度は50℃を超えました

5日が経つと表面は乾燥部分と微生物による作用が見られるところが出てきます。そして発酵作用により中の温度は50℃を超えてきました。このまま放置をするのではなく乾いている表面部分と水分を含んでいる中の部分、そして上下にスコップですき返しを行い均一になるように混ぜて、再度、パイプを入れながら山状にします。

もみがらぼかし(10日目)

び微生物微生物
塊も見られます
メイラード反応による変色

1週間が過ぎると中と外でかなりの変化がみられるようになりました。表面はやは乾燥気味になります。そしてそのまま固まってしまうため中央のような塊が見られます。その表面は微生物の作用が1週目よりも広範囲にみられます。



そして特徴的なことは発酵により熱を発することでメイラード効果がみられるということです。このメイラードというのは調理するきに意識することなのですが、肉などの表面を焼き固めたりすると褐色に変化をします。

これはタンパク質と糖が共存するものを加熱することで起こる現象のことを言います。ステーキに例えるのであれば、熱したフライパンに肉を乗せると「じゅ~」とこんがりと焼き色がつき、香ばしく美味しい香りが漂います。さらに焼くだけではなく熟成時にも同じ現象は起こります。代表的なものは日本の伝統的な調味料、味噌や醤油です。褐色の色合い、これがメイラード反応によるものです。 調理面においてメイラード反応は、食品の美味しさと直結しています。

ならば、この、もみがらぼかしも同じことのように僕は考えました。発酵をするという熟成工程を経て完成に向かうので丁寧に全体を混ぜることにしました。時間はかかるもの塊は手でつぶすなどして上下中外を均一化し、見た目や、触った感じも同じようにしました。料理をやっているからこそ、発酵状態における水分量などが感覚で感じ取れるものがありました。

もみがらぼかし(15日目)

微生物が全体を覆っています
このパイプにより酸素が中に入ります
温度と湿度は常に確認

2週間が過ぎて、もみがらぼかし全体が微生物に覆われ、室内は熱を感じるほどになっていました。いつものことですが、この山を崩しては中外上下を全部すき返しを行い均一になるように混ぜ込み、再度、山状に戻すという作業の繰り返しです。

山を崩すと中は50℃を超えているので熱気が小屋中に広がり湿度も上昇をし汗が止まらなくなりました。それでもただひたすら良い状態というものは全体を均一に混ぜるということを料理から得ていることなので黙々と手を動かしました。

前回と同じように山の下の部分はメイラード反応が広がっていますが、それがそこだけではなく中心部分にも広がりを見せ褐色になった部分が多くなってきたことで全体を混ぜることで薄茶色になってきていることが目視できるようになりました。

ここでも重要なのは全体的な水分量です。触って、握って、匂いをかいで確認をして水分を足していきました。

半月を終えての感想

もみがらぼかし

初めての「もみがらぼかし」作り。まず400㎏というその量に驚きましたが、まだまだ序の口の量ということはすぐに分かりました。どこで材料の調達をすれば良いのかも分からぬまま、教えてもらった場所だけでなく、色々なところに行っては聞くということをしたことで、来年もここに来れば確保が出来るというのが分かりました。そして時間のある時に確保をしておく必要があるということも分かりました。

材料を集めて作り始めたときも何がなんだか分からない状態だったことで、素直に取り組むことが出来ました。発酵を伴うということが僕にとっては運が良く、料理をやっていた経験から「発酵」というシステムの理解と状況や具合というものが感覚的に分かったということは大きなプラスでした。

僕の中で「もみがらぼかし=パイ生地」という感覚でした。粉とバターを全体的にまんべんなく混ぜ込む、そこに水分を加え混ぜ込む。パイ生地を作るときは粉もバターも冷たい状態をフードプロセッサーなどを使い均一に混ぜます。均一に混ぜることで水を加えてからも均一に短時間で冷たいままで完成することができます。この感覚です。全体を均一化するということの大切さ。そして水分量の加減具合。パイ生地は粉なので湿度により水分量が微妙に変わりますが、もみがらぼかしも同じで気温や湿度で水分保有量が大きく変わるので、その状態をしっかりと認知し管理をすればよいものになるという判断基準になることも分かりました。

そして、僕が個人的に常に気にしていたことは「美味しくなれ!」と思いながら作る料理と同じように「良い状態になれ!」と思うことで、気持ちが入ることもちょっとした重要な点ではないかなと思い取り組んでいます。

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