神楽坂で2011年にスコティッユパブ「ザ・ロイヤルスコッツマン」を開業しながら、2021年より無農薬農業を始め、食を通じての体験や考えをまとめたブログです。食育インストラクターでもありオーガニックの普及に努める。国内では珍しいスコットランドの民族楽器バグパイプ奏者で全国のビールやウイスキーのイベントでの演奏も行っています

生姜の加工品と、畑の拡大について


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収穫を終え、初年度は委託倉庫に配送も終わりました。収穫前からジンジャーケーキやジャムを作っていましたが、収穫が済んだことで加工品も本格的に作っていこうという段階に入りました。

食品の加工についてはコロナ禍の最中の2020年春ごろに店舗を作る際に必要になる飲食店営業許可証だけではテイクアウトや通販に対応が出来ないので保健所に通いつめ出来そうな免許の申請をし、菓子、食肉、お惣菜の3つの許可証をあタラに取得をして商品レパートリーを増やしました。

店舗にお客様が来店をして飲食をするものと、テイクアウトで持ち帰るもの、通販という流通に乗せるもの、この3つは決して同じではなく、食品成分表の作成やアレルゲン表示などやらなくてはいけないことも多くありました。良い機会と思い専門書等を購入し勉強をしました。

生姜には大きな問題点がありました

畑から収穫をした生姜

スーパー等で販売されている生姜はきれいに洗浄されたものがパックされています。しかし本来は土が付いています。大根や人参などと違いゴツゴツと様々に変形をした生姜には土が深く入り込んでしまっている場所が多くあります。土を洗い落とすのが大変な作物なのです。それが故に加工業者様では「洗浄済みの物のみ受付可能」というところがほとんどだということです。

自分で育てた生姜を持ち帰り、洗浄をしてジャムやケーキを作っていますが、洗浄は凄く大変な作業なんです。タワシや小さいブラシを使って何度も何度も洗い直しをして土を落としていきます。1.5kgの生姜でジャムを作る際にも、何に一番時間がかかったかというと洗浄です。そして生姜は非常に香りが強いので、生産ラインがそれだけしか動かせなくなるということも多く、加工工場の生産性が落ちるそうなんです。これで土が付いているものが混ざってしまうと、精密機械なので洗浄も大変、さらに生産に取り掛かってあるものがあった場合は、そのすべての仕込みに土が混ざっている可能性が高まり商品としての販売が出来なくなり破棄になります。

加工工場にとっても、生産をする僕のような立場の人間にも少しリスクの高いっ作物なんだそうです。

土が付いたままの生姜では加工をしてもらえない!

だからこそ、専門的な加工業者様もかなり少ないのですがいてくれるので連絡を取りました。



生姜の加工について色々と相談

現在、店舗ではケーキとジャムを仕込んでいます。
これ以外に考えているものがいくつかあるのですが、何をどう使うかとか、量の問題など、色々と疑問が出てくるので、専門の加工業者様とメールや電話のやり取りをして、僕のイメージにどんどん近づけて行き商品化するという流れなのですが、この様なことを今までしたことが無かったので「商品開発」ということよりも、そこに至るまでのプロセスみたいなものが非常に新鮮で面白いです。

頭の中にあるイメージを言語化して材料の配分に変化を持たせて、自分ではなく業者様に作ってもらう。味を見て再度サンプルを作る。こうした方が良い、ああした方が良い。そういう疑問点や思ったことは、加工業者さんにちゃんと言わないと伝わらないんですよね!そして加工業者様も言ってくれるのを待っているということです。そうしないと何をどんなふうに作りたいのがイメージをすることすらも出来ないからです。

あの商品を作るときの、この材料でこんなのはできないだろうか?とか僕は考えています。なので造ってみたい商品が多くなってしまします。でもまずは自分で小さく試作をしてみるのが一番なわけです。そうすると作業工程から理解をすることができるからです。

生姜の加工品を定番にするために畑の拡大

現在の畑の広さは0.5反(150坪)です。今回の収穫で約1t弱の種になる生姜を倉庫に送りました。0.5反で約300kgの種を植えたので、これまでの3倍ちょいの広さの畑に僕の育てた生姜を種として植えることができます。それだけの生姜が出来るわけですが、畑の広さもまた通過点です。その次の年には今年と同じ収量だとしても2.7tになります。それが種になるわけです。

全部が全部、1.5kg超えの生姜にはなりませんでした。目標は2kgです。まだまだの数字ですが、こうすれば育つのではないか!?という仮説は既にこの1回目の栽培で考えていることがあります。2年目はその検証になります。もし、平均的に1.5kgの生姜が収穫でき2kgに近いものも収穫ができるようになれば、それは検証が正しいということになります。定植は1年に1回。たった1回しか答え合わせが出来ません。なので今年の体験が確実に来年に活きてきます。

今年はすべて一人でやっていましたが、来年は農地でのある土地で農業専門のスタッフを仲間に増やそうと経過売をしています。そうすると今年は週に2回しか畑が管理できなかったんですが、それが毎日、必要な時に見て管理をすることができるようになります。これは非常に大きなことです。

雨が降り続いている時や、日照りが続きそうなときなど即座に対応が可能になります。確実に今年よりも良い生姜が育つはずです。

拡大の理由は別にもあります

この1年目の収穫の際に、来年の設備として必要なものがハッキリしました。冷蔵保存ができる倉庫、作業をする小屋、資材置き場は作業小屋と同じで問題はありません。畑も拡大するために今年の畑は今回限りです。次の畑の取得に向けて動いている最中ですが「不便な所」が良いと思っています。

何も無いということが魅力に思えたからです。何も無いということが贅沢にすら感じました。来年は畑で体験型農業としても稼働をさせる計画でいますが、そうすると、種を植える、草取りに来る、収穫をするというような野良仕事は日常では無い体験になります。だからそれしか味わえないような環境が必要だと思っているからです。

近くにBBQ場を作るのもいいかもしれません。畑仕事が終わった後に、団らんをする場所です。
もしくは古民家を借りて少人数で宿泊も出来るようなのも良いかもしれません。


存分に畑で身体を動かしてもらってリフレッシュしてもらえるようなものが理想です。そのような環境のためにも畑を拡大することは必須になってきます。農業を通してコミュニティーを形成することが一番の理由です。スコッツマンは「神楽坂に根付くパブ」ということが大前提にあります。店舗であっても農業であっても、その様な地域を考えないで物事を進める気は全くありません。仕事をさせてもらえる場をかりるんですから、それ以上のものをお返ししないと。

だから、ただ農業で生姜を育てるのではなく、生姜で地域の役に立つという方が正しいです。生姜畑があることで新しい仲間が増える。地域とのつながりができる。加工場が出来れば、また仲間が増える。関係する人が増える。そうやって関係する人を増やしていき「きっかけは生姜」くらいのことをしたいと考えています。

最後に

商品加工というものは飲食店が店舗で提供する物自体は同じかもしれませんが、その過程や工程というものは大きく違うことがあります。作って直ぐに提供のできる飲食店とは違い、店舗の種に並べられていて、人気商品のようにバンバン売れるの商品でない場合は、作ってから消費者の購入までの時間があり、さらに購入してからもすぐ食べないかもしれないと、さらに時間の経過が考えられます。時間的要因の大きさを非常に感じます。そして自宅で食べても美味しいということです。

食品加工工場は多くありますが、作りたい商品を作れる工場も限られるという現状を今回知りました。特に生姜だったからかもしれませんが「土付き」という状態、洗いにくい食材ということ。香りが強いということ。ここまでハードルが高い食材なんだなと様々な工場に電話やメールをしてのやり取りの中で感じました。

この過程を体験したからこそ、自分で生姜の食品加工工場を作る意味はあると感じました。僕と同時期に生姜を始めた仲間もいます。もちろんほぼ全員が加工に関してはストップをしてしまいました。僕は料理ができるので自分で加工をすることができるし、そういう工場を知っていたり調べることが容易だったというだけです。全国には小規模でも生姜の生産をしている方がいます。加工をしようと思った時に同じような悩みを抱えたと思います。その悩みを解決することが加工場の体制、設備だと思いました。先日の農業ウィークでは生姜に良い洗浄機を見つけることも出来ました。食簿でもそういう物を導入しやっていけるのであれば、それは僕自身も非常に楽しいことです。

農業からこういう考え方になるとは思いませんでしたが、農業から派生する楽しみがいくつか増えました。

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