神楽坂で2011年にスコティッユパブ「ザ・ロイヤルスコッツマン」を開業しながら、2021年より無農薬農業を始め、食を通じての体験や考えをまとめたブログです。食育インストラクターでもありオーガニックの普及に努める。国内では珍しいスコットランドの民族楽器バグパイプ奏者で全国のビールやウイスキーのイベントでの演奏も行っています

コロナで変わり定着をした新しい食生活と飲食店の話し


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コロナ禍により多くの人々の
食生活が大きく変わりました。

現在、東京神楽坂でビールやウイスキー、英国料理を提供しているスコティッシュパブ、TheRoyal Scotsman(ザ・ロイヤルスコッツマン)の経営をしながら日々、キッチンで仕事をしていて、これほどコロナ禍は人々の食生活を大きく変えてしまったのか。そう思わない日はありません

なぜ、食生活が変わったと思うのか

飲食店を経営しながら、この約半間、定休日以外は毎日店舗に立ち続けています。緊急事態宣言が発令され不要不急の外出が制限された生活の中で多くの方々が『食べ物』に困った日常になりました。

これまでは朝起きて、朝食を食べたり食べなかったりして出勤をし仕事をはじめ、お昼にはお弁当や先輩同僚と近所の飲食店に行くなどしてお昼ご飯を食べ、再度仕事に取り組み、退社時には自宅で家族と食卓を囲んだり、友人たちと飲みに出かけ、終電近くにラーメンなど食べて帰宅をしていたかもしれません。食べるという行為を考えなくても自由な時間で食べられるだけの物が溢れかえっていました。

令和2年4月7日。この日に「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」が発令し、東京は5月25日までの約1カ月半もの期間、この1カ月半という期間に「食」が自由ではないことに気が付かされました。

飲食店にはシャッターが閉められ営業をしていなく、街の灯が一気に無くなり、その寂しい空気だけが街に漂っていたのを今でもハッキリと覚えています。これにより食事にありつくことがしにくくなった生活が消費者に襲い掛かりました。スパーやコンビニで買い込みを行うなど、東日本大震災のときのような空気感がありました。「自由に食べられる」という日常が「自由に食べられない」という非日常に移り変わりました。

しかし、僕も営業をしていた飲食店と同じように、この期間中にはお弁当やお惣菜を作り、毎日店舗を許される時間内でオープンをしていました。多くのお客様にテイクアウトでお弁当、お惣菜を購入していただき、店舗自体は非常に忙しい期間でもありました。

それまでテイクアウト自体は定番のフィッシュ&チップスはやっていましたが、それ以外の料理に関しては手を付けていませんでした。理由としてはテイクアウトの容器であったり、手間暇などの問題以上に、「衛生」というものを怖いと思っていたからです。しかし、店舗の運営も続けるために毎日テイクアウトを朝から晩まで作り続けました。

そして気が付けば、テイクアウトは店舗のお客さまだけの話ではなく、一般消費者としての生活で当たり前の地位にまでなり、さらにデリバリーも同じように生活に密着をした食事となり得ました。



この半年間の間に「飲食店でご飯を食べる、お酒を飲む」という形態が、飲食店の料理を「自宅で楽しむ」という形態にまでなってきました。家からは出ずにスマホのアプリをつかつてアクセスをして注文を完了する。支払いはクレジットカードが紐づいているので決済と同時に引き落とされる。

更に人と会うという行為自体が減少したこの時期にオンラインで顔をあわせ飲み会をする「オンライン飲み会」。この飲み会の為に飲食店からテイクアウトやデリバリーをし、それを各自見せ合うなど。これまでは違う形でのコミュニケーションが、新しい「食体験」を得るきっかけになりました。

食生活の変化は何を生むのか

店舗の取り組みとして定番化するテイクアウト

緊急事態宣言時にテイクアウトやデリバリーを多くの消費者が利用しました。そしてそれは今現在も続いている飲食店のサービスの一つとして定着しています。外食より内食ということへの変化です。

もともと「食」は「人と人とをつなげる」大切な機能を持っています。そしてつながりも生んできた場でもあります。このようにコミュニケーションの場として人と人が食を通して時間の共有をしてきました。コロナ禍で外食という場を断たれ家で過ごす時間が増えましたが、やはり人と会う、話すというコミュニケーションはオンラインという形で日常に溶け込みました。Zoomに代表されるようにパソコンやスマートフォンの画面越しに各自お酒や料理を用意をして飲み会を行うオンライン飲み会。初めのころは不自然な感じがありましたが、自然に様々な要素を取り入れ時間を共有する楽しさや嬉しさを感じる方が多くいました。

テイクアウトを店舗のサービスとして3月から取り組んでいましたが、ご利用を頂く方から「オンライン飲み会で食べますね」とか「オンライン飲み会で料理を紹介し合うんです」という話を何度も聞きました。飲食店の中で起きていた食事や会話は、そのまま自宅の中で画面越しに行われているという現実を知った瞬間でもありました。飲食店に集まりお酒を飲み、料理を食べる時間の共有をオンラインで行う。さらに飲食店の中では同じものを取り分けて食べたり料理の共有も自然に行われていましたが、オンラインでは画面越しになってしまうので出来ないという現実を、各自が同じ料理をデリバリーやECサイトから購入をして同じ料理、同じお酒で行うというオンライン飲み会にも発展をしたことで、店舗やECサイト上でグループ対象の商品開発も進みました。「共有=一緒に食事をする」という根本的な欲求は変わることなく進化をしました。

新しい飲食店のカタチ

食生活の変化の中で一番大きいのが飲食店の利用が減ったということではないでしょうか。オンラインを使ってのコミュニケーションは日に日に技術の革新と共に新しく、そして便利になっています。そして店舗でお客様に直接確認をしてみると「自宅での食事」「家族と食事をする機会」が増えていることを実感します。

このことで飲食店だけではなく、飲食店に食材を供給する農家さんや業者さんも同時に影響を受けています。利用をするお客様自身も「感染防止の為に外食をしない」という選択肢が増えた影響によるものが大きいです。これまでの「楽しい外食」の姿が無くなっているのは事実です。

健康

外出が減った事での運動不足による肥満。ストレスによる精神面へのケア。飲酒量の増加による健康障害

コミュニケーション

在宅での仕事により家族での時間が増える。オンライン飲み会などオンラインでのコミュニケーションの活発化

時間

通勤、通学の減少により自宅での家族と共有する時間の増加。それに伴い家庭内での調理、これまでの食の見直し

「健康」「コミュニケーション」「時間」これらの大きな3つの要素で飲食店の在り方が変わりました。これまでは来店をして食べていた飲食店の料理を自宅で食べるという需要が増えました。これに伴いテイクアウトとデリバリー市場は大きくなりUberEats、出前館などの企業も大きく飛躍をしています。さらにはゴーストレストランの登場です。シェアキッチンなどを間借りして調理を行い、デリバリーを行うというもので、こちらは専用サイトやアプリにより注文を受け付け、配達をするシステムです。飲食業は開業に大きな初期費用が掛かりますが、このゴーストレストランだと調理器具や店舗の施工費などの諸経費の削減につながり市場を拡大しています。

ゴーストレストランと聞くと新しいものかと感じるかもしれませんが、日本に昔からあった出前や仕出しと原理は変わりはありません。この文化があるからこそ抵抗なく受け入れられ、急速に広がったのではないでしょうか。

テイクアウトやデリバリーは目新しいサービスではなく、既に定着をしたサービスだということです。

そして、今後の展開としてはオンラインを利用するECサイトの拡大です。これまでアナログ色の強い飲食業界業界ですがテクノロジーの導入により変化が起きています。しかしここでも消費者の欲求やニーズを取り入れることは店舗と変わらないものですが、画面を見て注文をして届く商品となるために事前に商品の詳細をしっかり掲載をしたり、写真での情報など料理人が包丁を使うように、文章力や写真技術なども必要になってくる技術と考えています。このような専門的な技術を代行してくれるサービスも増えてくるものと思います。

在宅による運動不足のやストレスの改善の為に食事(健康)に気を付ける消費者も増加すると予想をしています。これまでの白米食に玄米を取り入れてみたり、野菜を多く摂取をしたり、さらには産地であったり栽培方法、流通、生産者などへの食品自体の質が求められ有機食品やオーガニック市場の拡大が起こるとも考えています。飲食店も大きな仲介業者ではなく信頼のおける農家と直接取引をすることで他店との違いをアピールすることができます。コロナ禍によって健康という大きなキーワードに「食」は直結する大きな市場です。飲食店側の取り組みは今後も変化をしつつ進化をして行くものと考えています。

まとめ

今回のコロナ禍により飲食産業はこれまでにない打撃を受けている最中ですが、食は人間にとって生命の営みです。その食で消費者を幸せにできることが可能な業種の一つが飲食店です。

これまでアナログでITがあまり進まなかった業界がタブレットの導入をしテイクアウトやデリバリーを取り入れ、電子マネーやQRコード、クレジット決済の導入など短期間にIT化が進みました。そして店舗内では従業員のマスクの着用、席数を減らしたり、パーテーションやアクリル板の設置、来店消費者の入店時の検温やアルコール消毒など新しい生活に合わせた対応を日々行いながら飲食店として存在をしています。急激な生活の変化は失ったものも多いのですが、新たに手に入れたものも多いと日々店舗に立ちながら実感をしています。

「食の楽しみや幸せを届ける仕事」ということを常に忘れずに新しい生活による変化に対応をしながらも、食に関係する生活問題や環境問題などへの取り組みを行っていくことで地球規模での変化をもたらすことのできる重要なポジションということを認知し取り組んで行くことが、今後の生活に起こる大きなイノベーションになる可能性を秘めていると信じています。

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