神楽坂で2011年にスコティッユパブ「ザ・ロイヤルスコッツマン」を開業しながら、2021年より無農薬農業を始め、食を通じての体験や考えをまとめたブログです。食育インストラクターでもありオーガニックの普及に努める。国内では珍しいスコットランドの民族楽器バグパイプ奏者で全国のビールやウイスキーのイベントでの演奏も行っています

カーボン・オフセットに対しての農業


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農業を始めてみると、それはそれは知らない言葉に数多く出会うことがあります。料理にも専門用語があるように農業にも専門用語はあります。どの職業でも同じようだと思います。おして、農業を始めたことでこれまで、何となく聞いたことがある。というようなことにも気が向きて調べるようになりました。

タイトルに書いてある「カーボン・オフセット」もそのような言葉です。地球温暖化が世界中で唱えられる今日。ここ日本でも同じように社会的な言葉で登場する機会が多い言葉です。

農林水産省のカーボン・オフセット

農林水産省

このような環境に関わる言葉は経済産業省、環境省や農林水産省から多く発表がされていますが、このカーボン・オフセットは検索をするとトップに農林水産省のへ―ムページが表示されます。アクセスをしてみるとこのように記載されています。

カーボン・オフセットとは、市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等の社会の構成員が、自らの温室効果ガスの排出を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等(クレジット)を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部又は一部を埋め合わせるという考え方です。

引用元:農林水産省ホームページ

正直、理解できないようにわざと難しく書いているようにしか思えない文章です。お役所は何でも難しく行って市民や企業が理解を出来なくても「言いましたよ。」「書いてありますよ。」と自分自身の身を守ることを優先的に考えているのでそうならざるを得ないと昔から思っています。もっと分かりやすく出来ないのかなと。

ポイントは2点です。

  • 自らの温室効果ガスの排出を認識し、主体的にこれを削減する努力を行う
  • その排出量の全部又は一部を埋め合わせる

カーボンとオフセットで考える

森林

「カーボン・オフセット」という言葉を1つの言葉として考えるのではなくて分けて考えた方が非常に分かりやすくなります。そもそもこの言葉は英語です。英語で書くとこうなります。「 carbon offsets 」2つの単語で1つの言葉ということが分かると思います。

  • カーボン(carbon) 炭素
  • オフセット(offsets)埋め合わせる

こうすると「炭素の埋め合わせ」という理解をしやすい言葉になります。つまり、「排出炭素をどの様に埋め合わせをするか?」ということを表す言葉がカーボン・オフセットです。では、なぜカーボン・オフセットが世界中で唱えられているのかを考えます。

カーボン・オフセットとは

「炭素の埋め合わせ」これがカーボン・オフセットになると上で書きましたが、これは、どうしても排出されてしまう二酸化炭素を別の方法で埋め合わせをしよう。ということなのですが、この埋め合わせをカーボン・クレジットで埋め合わせなどをします。では、このカーボン・クレジットというものは一体何なのでしょうか?その前に出てきたカーボン・ニュートラルは?まずは単語の意味を理解しないと繋がりません。僕は最初そうでした。国のページなどを読みましたが何を言いたいのかが一切分からない。何度も何度も読み直しては別のページで調べたりしながら僕なりに理解をしたことを説明します。



➀カーボン・オフセット

画像出典:ECOネット東京62

まず、この言葉を理解しましょう。

僕たち、ヒトの経済活動、そして生活で排出された二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスがあります。、削減対策をしても、どうしても削減できない部分を、植林・森林保護・クリーンエネルギー事業(排出権購入)などで、埋め合わせする行動。このことをカーボン・オフセットと言います。これは企業の製造者や販売者が、商品の製造・販売、サービスなどを通じて排出される温室効果ガスを埋め合わせする取り組みです。

②カーボン・ニュートラル

画像出典:省エネ家電deスマートライフ

人為的に大気中に排出されるCO2の量と森林などが吸収するCO2の量との間で均衡が取れた状態をいいます。

このために「実質ゼロ」が目標なんだそうです。この実質ゼロという考えは、パリ協定が目指す「世界の平均気温上昇を産業革命前より1.5℃に抑える」ということが前提になります。

そのためには、大気中に排出される温室効果ガスを、2050年には世界全体で実質ゼロにする必要があります。つまり、今後の排出量は吸収量とイコールではないといけないという訳です。しかし、温暖化をしている中で均衡が取れているとは思えません。だから課題なんです。

これは家庭でも出来る取り組みが多くあります。こまめな消灯や省エネ家電を使うなどです。

③カーボン・クレジット

画像出典:株式会社日本オフセットデザイン創研

カーボン・クレジット(Jクレジット)
国が認証するJ-クレジット制度とは、省エネルギー機器の導入や森林経営などの取組による、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。
本制度は、国内クレジット制度とオフセット・クレジット(J-VER)制度が発展的に統合した制度で、国により運営されています。
本制度により創出されたクレジットは、低炭素社会実行計画の目標達成やカーボン・オフセットなど、様々な用途に活用できます。

引用:J-クレジット

理解できますか?僕は正直「何が言いたいのか全然分からん!」となりました。

分かりやすく言うと「温室効果ガスの排出削減又は吸収する制度を通じて、生成される排出削減・吸収量をクレジット化(価値化して見える化)したもの。

どうでしょう!かなり分かりやすくなったと思います。さらに要約するならば、僕たちで出来る省エネや植林活動によって削減・吸収された温室効果ガスの効果を数値化したものが、カーボン・クレジットになります。

クレジットという意味は「信用」という意味です。つまりその数値化されたものが信用的な価値を持ったものとして売買可能という特徴があります。売買可能ということはお金が動くということです。つまり、一つの事業として成立をするものとなっています。

二酸化炭素排出量の増加による地球温暖化

温暖化

地球温暖化はよく聞く言葉なので理解が出来ると思います。僕たちの住む日本もここ数年は異常気象による自然災害で多くの被害を受けています。これからの季節の風物詩、ゲリラ豪雨もその一つです。僕は今年で45歳になりますが、幼少期は梅雨にはしといとと降り続く雨、夏になると夕立と雷雨と季節を感じることができました。しかしここ10年くらいは四季がハッキリしなくなったと感じています。

➀二酸化炭素が増えることによる影響

二酸化炭素が増え続けると、地球温暖化が進みます。

これは地球の平均気温が上昇することで、ニュースや多くの書籍にもなっています。気温上昇により異常気象が起こりやすくなっていますが、それだけではありません。日本が亜熱帯気候に近づいているというような地域変化、南極の氷が溶けることによる海水面の上昇、自然界の生態系の変化など、地球規模で様々な悪影響をもたらします。

その悪影響は僕たち人間にも大きく降りかかってきています。食糧生産や水資源の枯渇、健康被害、経済格差の拡大など、生活に直結する問題が多いことも特徴です。

②なぜ二酸化炭素が増えているかという原因

二酸化炭素が増えている原因は主に3つあると考えられています。それらを紹介します。

1:産業の発展

経済の発展

僕たちは、この日本という国においてあまり不自由のない社会で生活をしています。蛇口をひねれば飲むことのできる水が大量に流れだし、お腹が空いたら24時間営業をしているコンビニエンスストアで、お弁当やパンを買うことができます。どこかに行きたいときは電車や飛行機、車で簡単に行け、部屋が暗くなったら電気を付けて明るくし、夏の暑いとき、冬の寒いときはエアコンのスイッチを押せば冷たい風や暖かい風が自動で出てきます。

しかし、昔の人間社会は馬や牛など家畜を飼い、水や風がエネルギー源でした。しかし、18世紀後半の産業革命により、エネルギー源に大きな変化が生まれました。石油や石炭、天然ガスなど、いわゆる化石燃料をエネルギー源として使い生活をするようになりました。

化石燃料というものは、微生物の死骸や枯れた植物などが何百年、何万年、何億年という途方もなくなるような時間をかけて化石になり、それらが、やがて石油や石炭になったものを化石燃料と言います。しかし、この化石燃料は掘掘り起こして燃やすと二酸化炭素が大量に大気中に放出されます。

どれくらい放出されたかは二酸化炭素濃度の観測から見て取ることができるのですが、世界で工業化が進む1750年代以前の平均は278ppmとされています。しかし2017年の世界平均濃度では観測開始以来最高の405.5ppmになったと気象庁が発表をしています。実に46%も増加をしたことになります。

2:豊かになった人間生活

便利になった人間の生活

産業革命というのは、産業だけが発展したのではなく、その恩恵は全て僕たち人間生活に直結をしています。そのことで化石燃料がこれまでに無いほど大量に使われるようになりました。それに伴い二酸化炭素濃度も加速的に増加をいていきました。身近なものだと、ガソリンや灯油などに石油が使われています。2022年、ロシアとウクライナの問題で更に上昇をしています。

地球温暖化防止のために様々なものが電気を使ったものに変わってきています。代表するべきはガソリンで動いていた車の電気化です。しかしながら、その電気を生み出す発電所でも、石炭や天然ガスが使われていることで、二酸化炭素を大量に排出します。

3:森林面積の減少

森林伐採

小学生のときに理科で植物は二酸化炭素を取り入れて酸素を生むということを学んだと思います。このことからも植物は地球に貢献していることが理解できます。世界中にある森林は二酸化炭素を吸収しています。それは地球温暖化防止への大きな役割なのですが、人間は自分たちの生活のために、その森林面積を減少させてしまっています。このことも二酸化炭素が増えた原因の1つです。

世界森林資源評価によると、世界の森林面積は1990年の41.28億haから、2015年には39.99億haに減少したと言われています。少しでも森林を残そうという動きも多くあり植林などもしていますが、使われない農地の転用による建設や、焼き畑、燃料用木材の採取、そして近年世界中で起きている森林火災、さらに違法伐採などにより、木の成長よりもはやい速度で森林は減っています。

4:世界の二酸化炭素排出量に占める主要国の排出割合と各国の一人当たりの排出量の比較(2019年)

出典: EDMC/エネルギー・経済統計要覧2022年版

農業の役割

トラクター

2020年のカーボン・オフセットの市場は6億ドル(786億円)と評価されました。これが2050年までに2,000億ドルに達すると予想されています。実に30年で33233%の増加ということになります。この数字が凄いことが分かると思います。

今後、今以上に僕も含め一般消費者はより気候に敏感になっていきます。そして、気候変動に直接携わるような企業・組織は、重要な時期に入っていて、変化を起こすためにあらゆる面で厳しい判断をせざるを得ない状況に直面をしています。なぜなら、規制当局、顧客、消費者が見ているからであり、その影響力は計り知れないからです。

農業は温室効果ガス排出量(GHG)に比較的大きく貢献しています。イギリスのデータになりますが、排出量の10%を農業が占めています。しかし、CLA(農業関係の経済機関)によると、実際には総二酸化炭素排出量の約1.7%しかなっていないことになるそうなんです。ちょっと驚きです。

二酸化炭素よりも実際は、亜酸化窒素とメタンの排出の方がはるかに重要です。それらは、肥料と家畜からの排出されますが、イギリスのN20(亜酸化窒素)とCH4(メタン)総排出量のそれぞれ68%と47%を占めています。

炭素は農業にとって非常に重要な役割があります。

なぜなら、農業による土地利用は、炭素を大気から吸収することができる数少ない方法の1つだからです。

これにより、農業がカーボン・オフセットの重要なサプライヤーとなります。そして農家がこの10億ドル規模の市場で重要な役割を果たしていることを意味します。

このようなことからも、農業はカーボン・オフセットの重要な担い手としての存在が今後大きくなると僕は思っています。作物を育てるということに付け加えて、カーボン・クレジットとしてもお金が動く時代がもう来ているということで、既にイギリスやアメリカでは、それが動き始めているということです。

それに加え、有機市場がもっと大きくなることを願います。

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