神楽坂で2011年にスコティッユパブ「ザ・ロイヤルスコッツマン」を開業しながら、2021年より無農薬農業を始め、食を通じての体験や考えをまとめたブログです。食育インストラクターでもありオーガニックの普及に努める。国内では珍しいスコットランドの民族楽器バグパイプ奏者で全国のビールやウイスキーのイベントでの演奏も行っています

全国農業新聞に掲載されました。


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農業を始めてから世の中の農業の動きを把握するために農業専門の新聞を読んでいます。それが「全国農業新聞」で農業者の公的代表機関の農業委員会系統組織が発行する農業総合専門新聞です。

2月17日(金)発刊の紙面で農業への取り組みが掲載されました。

全国農業新聞2月17日(金)で掲載

市貝町を選んだのは紙面にも書いてある通りなのですが、付け加えるとしたら「何もない、知られていない」ということです。栃木県は恒例の都道府県人気ランキングで毎年下から数えた方が早い順位です。2021年は40位、2022年は41でした。そしてどうして自虐的なことをしたのか分かりませんが「栃木県の中で一番影の薄い町はどこか?」というアンケートを栃木県民に取ったときに、見事!最下位になったのが僕の畑のある市貝町なんです。

事実、このことが決め手になりました。影の薄い町として名前を知る人が増えたわけです。中途半端な順位よりもよほどインパクトは大きいです。実際に市貝町に行き散策をしたところ、交通インフラの不便さ、買い物の不便さ、そんな不便だと思うことは、全部都会で便利と思っているか、それすらも思わないで生活に関係しているものばかり。

便利でないだけで不便ではないということです。むしろ無い(不便)のが日常であれば、それは不便とも思わないということです。

コーヒー飲みたいと思ったらカフェに入れば良いし、コンビニでも売っています。市貝町はちょっと先にコンビニがありますが車とかバイクでないと面倒。道の駅もあるけれど閉店が早い。コーヒーが飲みたかったら自分で入れれば良いだけです。そういう時間もコーヒー代として僕らはコンビニやカフェで買っています。コロナ禍で飲食店も少なくなりすぐ近所で食べられるとこはありません。これまた出かけるわけです。

不便を楽しむ感覚「不便益」

田園風景と真岡鉄道

便利ってのは凄く良いことだと思います。僕も農業以外のときは東京新宿区神楽坂、この山手線のど真ん中で飲食店をしながら生活をしています。不便と感じたことは無いです。この神楽坂は飲食の町なので外食には本当に困ることがありません。線路も5線通っているので交通も便利です。

「不便」というのはどういうことなのか考えたときに、料理をやっているせいか厨房のことを考えました。



僕のお店はハイテクな厨房機器はありません。コンロがあってコンロの下にオーブンが一つあります。電子レンジが一つ、そしてフライヤーがあるくらいです。この中で料理を仕込んだりお菓子を仕込んでいます。レストランやパティスリーにはコンベクションオーブンなど仕上がり温度を管理するオーブンもあります。

ローストビーフを焼くときはコンベクションオーブンだと芯温計を肉に刺してオーブンに入れれば指定した温度になったらブザーがあり出来上がります。凄く便利です。僕のお店は肉を焼いてオーブンに入れ大きさからタイマーをかけて時間になったらオーブンから出して触って確かめ、手前の温度で取り出し余熱で火を入れます。

今では「スマートキッチン」という言葉もあるくらいです。人手不足の解消のために個人店でも様々なものが「全自動」です。それよりも全自動で作られた様々な製品が袋に入って店に来る時代です。確かに安定的な味だし、便利です。そんなスマート(便利)に対して「手作り」というのは「不便」になってしまうのかというと決してそうではなく、むしろ利益的部分の方が大きいと僕は感じます。

コロナ禍中の2020年2021年はお弁当を毎日毎日作っていましたが、その時に毎日9種類のお惣菜と3種類のお弁当を作るために今まで以上に早起きをし、今まで以上に仕込みをするという経験がありました。そして今まで以上に「お客様」を意識しました。これまでは何だったのか?そう思えるほどです。料理をやっている人なら分かるのですが、お弁当やお惣菜ほど時間もかかり安全を気にしながらしなくてはいけないものはありません。だから面倒だと思うし、やらない人が多いんです。

のり弁
鮭弁

そこに2021年から農業を始めたことで、そのことはこれまで以上に感じずにはいられませんでした。防腐剤や着色料は当然のように使わない。なるべく家庭料理を作る。パックを切って盛り付けるのではなく、自分で皮を剥いて、切って、調理をするように各仕事を確認して進めました。

時間のかかる仕込みを毎日行い得られたことは「食べてくれる人のことを考える」という飲食店では当然のことかもしれませんが、その深さがこれまでとは比べものにならないような深さから考えるようになりました。

16歳から飲食業に携わり。恥ずかしい限りですが42歳でこの大切なことを再確認することができました。

できることが増える

できることが増える

不便が故に、何でも自分でしないといけない環境も良いのかもしれません。

市貝町は無いものが多いので、自分ですることがある意味、当然という環境です。なので自分で何かをしないと何も起こらないし変わりません。機械化が駄目とかそういう話ではありません。それは時代の進歩や技術の進歩という素晴らしいものだからです。

しかし、今までやってきたことをやらなくなると、できたことができなくなってしまいます。できないことが増えて行くということになります。

これだけ便利になった世の中です。その中で自分ができること、自分しかできないこと。そういうモノコトを増やすことというのは非常に大切なことです。

それが独自の技術として自分の力になって行きます。

できることが増えるから、社会の中で役に立つことも増え、活躍をする場をもらえるということに繋がります。それは誰かの役に立っているという人間の大きな貢献感に影響をします。貢献感を得ることができればモチベーションUPにもつながり、ますますチャレンジをする精神が大きくなります。良い循環の中で生活することができるようになります。

不便で得られることに気が付いたら、それはラッキーだと思うし新しい発見で成長できる余白を知ることなので大切にしたい。そう思います。

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