コロナ禍で開催が無かった新宿伊勢丹英国展、今年2023年の3月に開催さることになり、バイヤーさんから出店依頼を受けました。2016~2019年の3年間は連続出店をしていて、コロナ禍直前の2020年は予定がかぶってしまったために参加ができず、翌2020年~2022年はコロナ禍のため開催をしていませんでした。なので4年ぶりの開催参加です。
今回も基本的には「英国パブ」としての飲食ブースでの出店です。ブレックファスト、ハギス、コロネーションチキンなどの英国伝統料理とビールやウイスキーを提供します。2019年はブレックファストをお目当てに本当に多くの英国好きのお客様が来店をくれスコッツマンのカウンターで思い出話しをされていて一緒に色々とお話をしました。
「英国展」という名前なので、当然ですがイギリス好きな方が多く来館をします。催事フロアにはイギリスの国旗ユニオンジャックを多く目にします。紅茶にスコーンをはじめとする英国菓子、スモークサーモンにチーズ等々。食品だけでなくお皿やティーセットなど本当に多くのイギリスの商品で溢れます。
出店をする際に一番に考えることはたった一つです。
「新宿伊勢丹英国展に来て何に対してイギリスを感じてくれて思い、思い出すのか」
例えばですが、実際にイギリスに旅行や仕事で滞在をしてパブやテクアウトでフィッシュ&チップスやブレックファスト食べたときになんて思うのか?多くの人は「大きな!」とか「朝から重たいな!」そのサイズや量、内容に驚くと思います。日本に帰ってくるとなかなか同じような料理にお目にかかれません。なのでスコッツマンでは開店当初より「あの感動や驚きあってこそフィッシュ&チップス」と考えて大きなものを提供しています。
あの一皿を見ることで当時の気持ちや感動を思い出す。
そこが僕が考える大切なことなんです。日本中にパブはあるけどフィッシュ&チップスの大きさに最初からこだわるパブは極少数、ほぼ無いです。
今70~80歳代、僕世代の親の世代を考えても、当時イギリスに旅行するということは今ほど簡単では無かったはずです。その当時に留学をしたり、旅行で経験したこと。その中に食事は何度も何度も経験や体験として記憶に残っています。食べ物の記憶は特に強く残ります。その時代のイギリス料理は今ほど洗礼されていないので味も大味で煮込みとかパイ料理とか茶色いものが多かったはずです。その思い出が大切で価値なんです。
新宿伊勢丹英国展に出展をしていて、やはり母親世代の女性に「懐かしいわね♪」と何度も声をかけて頂いたことが嬉しかったですし、僕にとってはその大切な思い出話を聞かせてもらえるのが楽しかったです。
だからこそ、奇をてらった英国料理とかモダンな盛り付けとかは一切せずに伝統的な形の提供を心がけています。
ここまで書いたような思いでや体験をベースに商品を考えることが軸になっていますが「スコッツマンだったら何かやるだろう!」そう思ってくれている方も多くいらっしゃるので、そこもしっかり考えます。スコッツマンに集客が多くなるということは主催側である伊勢丹の利益に直結をします。三越伊勢丹として英国展は催事の中でも今や一番の稼ぎ頭となりました。
色々と材料が多く面倒とされるブレックファスト。イギリスに行けばどこのホテルでも朝に食べられる朝食です。しかし、材料をちゃんとそろえようとすると意外に大変。しかもそれぞれ調理が必要なこともあり更に大変。
でも、イギリスへ行ったことのあるか人であれば一度は口にしたであろうブレックファスト。これを2019年に提供をしました。食材を仕入れる業者さんに何度も何度も相談をし、大口や小口での発注数仕入れをお願いし、伊勢丹新宿店への直接納品。様々な相談に乗って頂いてブレックファストの提供をしました。
英国展初日の開店時間。それと同時にカウンターは満席。注文が止まりませんでした。5日間ある開催日の最中に一部足らなくなりそうな食材が判明したときに慌てて電話をしたら当日に担当者様が運んできてくれたり大変お世話になりました。終わってみたら当初の予想数を大きく超えていました。期間中に連日足を運んでくれた女性のお客様もいました。ブレックファストが目当てで福岡から飛行機で来られた方もいました。伊勢丹さんからも大変喜んで頂けたとの連絡を幾度となくいただきました。
大変なことは最初から分かり切ったことです。だから誰もやらないんだから自分がやる。それで多くお客様が「思い出」や「懐かしさ」を感じてくれます。新宿伊勢丹英国展に来て良かった。そう思って頂けるようなことが一番必要です。
今回もちょっと面倒な一皿を提供しようと考えていたんですが、その料理を英国展の責任者さんからも「あの料理を・・・」と相談をされたのでやらない理由がありません(笑)
パブと言えばビールやウイスキーです。パブの定番のギネス。これは独特の提供の仕方ですが提供可能なように担当者さんと話をしています。それ以外のビールに関しても定番のビールを。あと大切なお酒にサイダーというリンゴの発泡酒が樽でありタップから提供をしています。このどこのパブにも必ずあるサイダーですが、これも日本のパブにはなかなかない商品です。イギリス系のサイダーの樽は基本的に30Lと大きいので提供が少ないと品質が悪くなる恐れがあるからです。でも、ビールと同じように樽のサイダーがタップからグラスに注がれるのは日常的に当り前の風景です。
このようなことを考えてもサイダーは必要なお酒です。しかもタップからグラスに注ぐという姿が重要になります。
ウイスキーに関しては定番の商品というよりはスコッツマンだから提供できるというようなラインナップの方が喜ばれます。もちろん定番品はいくつか持って行きますが、ここ数年でウイスキーブームの中でも特にジャパニーズウイスキーの人気は世界的にみても冷めることがありません。秩父蒸溜所のイチローズモルトはきっと期待されている商品です。以前、ジョーカーを内緒で持って行ったんですがSNSで拡散されあっという間に情報が広まり早々に売り切れました。今回であれば僕が開店当初に購入をした樽を昨年末にボトリングしたウイスキーがあります。店舗での提供をしていますが、それ以外で既に終売をしたイチローズモルトなどはきっと喜んでいただけるウイスキーかなと思ってます。
イギリスと言えばジンもそうです。つい先日提供を始めた辰巳蒸留所とのコラボレーションのジン「ジンジャージン 印」。こちらは一般販売はされていないですし、僕が育てた生姜を使ったジンです。もともと辰巳蒸留所のジンやアブサンは生産本数が少ないことでバーにも行き渡らないです。専門的なバーやコネクションのある店舗が揃えているマニアックなジンです。この辰巳蒸留所のジンもスコッツマンには多くあるのですが、今となっては本当に飲むことができない初年度のジンを揃えようと考えています。
過去3年間は飲食としてのブース出展の依頼でしたが、今回は「物販としての出展もどうでしょうか?」と声をかけて頂きました。スコッツマンの店舗で販売をしているスコーンなどの英国菓子、そして農業を始め生姜を育てていることで作っているジャムやシロップ、ジンジャーケーキなどの商品。こちらを飲食とは別ブースでのお話しを頂きました。
ありがたいお話しなのですが、これは今の厨房機器では対応が確実に出来ないのでお断りをさせて頂きました。その代わりに飲食ブースを伸ばしカウンターの一番端で物販ブースとして活用するという提案を頂き、その様にさせて頂くことで決定をしました。
お菓子の物販に関しても新宿伊勢丹英国展の担当者様が他の出店者の方やお客様から聞いてのことだったので驚きました。スコッツマンは料理を最低限出来るコンロやフライヤー、オーブンの大きさなので、パティスリーやティールームの方が大量にスコーンを焼くようなオーブンはありません。お菓子の道具すらさほどありません。その中で限られた種類と量を随時作っています。なので売切れだったりすることもあります。英国展に限らず催事というのは「量」が重要なのでそれに対応が出来ないのが現状です。なので物販に関しては1日に限られた数を提供し、売切れしだい終了という形です。
その提供の仕方も考えないといけません。他のブースの方のようにショーケースの中にお皿の上にスコーンを積んでおくのは見栄えが良いですが無くなってくると寂しく感じるし、注文を聞いて1個1個を紙袋等に入れるなど、物販に対しての担当者も必要になります。過去の経験があるので料理とお酒の提供がメインの中で、そこにどれだけ人と時間が取られるのかが想像ができます。なので提供の仕方自体を考えないといけません。今考えているのはセット販売です。スコーンや他の英国菓子、そして農業を知ってもらう生姜ジャムなどを一箱にまとめたギフト使用にして数量限定です。このようにすれば上限が決まるのでスコッツマンの厨房での製作も可能で事前準備が可能になってきます。この新宿伊勢丹英国展での物販も初めてなので楽しみです。
これまでの過去3年間はスコッツマンはスコッツマンと神楽坂で営業をして、僕と妻が2人で切り盛りをし、週末は知人居声をかけてヘルプに来てもらい、最終日は店舗を休みスタッフも合流をするという人員で行っていましたが、今回は1週間店舗であるスコッツマンはお休みして、ユッキー、山ちゃんの2人にも毎日参加をしてもらうことにしました。
この理由は「あの空気感を味わう!」ということです。これは誰でも、どこの店舗でもできることではありません。伊勢丹英国展としてバイヤーの方が調べて現地調査をして選ばれなければ出店することはできません。このような貴重な場ですし、店舗とは違う所で全く知らない方々の接客をするなどスコッツマンの店舗では決して経験することのできないことを経験する。これを理由にお店を開催時は全てお休みにすることにしました。
「スコッツマンとして出店はするけど、伊勢丹のスタッフとして対応をしないといけない場面が多々ある!」とスタッフには話をしています。話しの受け答えや言葉遣いなどが良い例です。伊勢丹の英国展に来るので来館する方も「伊勢丹が選んだ店舗なら」というような印象を持つ方も多くいます。一大ブランド伊勢丹の中で仕事をするということですからそう思われても不思議ではありません。
僕の場合というか僕が言うのはおかしんですが「身だしなみ」などは毎日朝礼の際にも言われます。髪型であったり容姿のことです。農業を始めたのでモヒカンではありませんが、これまでは緑モヒカンでボディーピアス、ヒゲ、刺青と販売員としてはちょっと・・・という部分がありましたが僕の場合は「そんなの打ち消すくらい頑張ればいい!」という考えのものち主なので、それは楽しさの一部として仕事ができました。スタッフには刺青やボディーピアスはありませんが何をどう思われ言われるかは分かりません。
僕の場合はその容姿から思われる見かけをマイナスからプラスに帰ることに楽しさを感じ接客をしているので良く思われることの方が多いです。そして自分のペースに確実に引き込みます。スタッフにそれは求めませんが、お客様から何かを求められます。それに対してプレッシャーを感じていると動きも小さくなりパブらし雰囲気を提供することができません。そういうプレッシャーや伊勢丹スタッフとしての責任感。そういう目に見えないものを体験し感じ取って欲しいと思い店舗をお休みすることにしました。
このことで重要になるのは、今のスコッツマンのスタッフが全員で参加をするわけですから、生半可なことはできないですし、僕が妻と2人でやってきた以上にサービスも売り上げも上がらないとおかしいわけです。僕の2本の手で料理をしてお酒を提供していたときと違い、僕の2本の手以外にユッキーの手が2本、山ちゃんの手が2本もあります。3倍の力量があることになります。だからと言って売り上げが3倍になることは難しいですが、店舗を休んでいる分、店舗の売上げ分も売り上げることを意識しないといけません。スタッフを増員して店舗も・・・とは僕は思わなくなりました。コロナ禍の中でも営業をしていた経験が大きく関与していると思います。今のスタッフと伊勢丹英国展での結果を欲しいんだと思います。それで自分の力を付けて欲しいんだと思います。