神楽坂で2011年にスコティッユパブ「ザ・ロイヤルスコッツマン」を開業しながら、2021年より無農薬農業を始め、食を通じての体験や考えをまとめたブログです。食育インストラクターでもありオーガニックの普及に努める。国内では珍しいスコットランドの民族楽器バグパイプ奏者で全国のビールやウイスキーのイベントでの演奏も行っています

農業と飲食店の両立と今後について


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3月14日~19日まで新宿伊勢丹英国展があったため6日、1度も畑に行けませんでした。しかも開催期間の10日ほど前から仕込みを連日やっていたので合計すると16日もの日数を行けませんでした。2021年から農業を始めてこんなに行けなかったのは初めてです。定植でも収穫でもないからまだ良しとしますが、それでも今は土作りの大切な時期なので少し悶々としています。

東京と栃木の距離と時間

距離と時間の問題

これは大きな問題です。片道に必要な時間は電車と車をつかって3時間弱。往復で6時間ほどです。交通インフラが充実している所や新幹線を使うとしたら関西まで簡単に行けてしまう時間が必要なことになります。僕の場合は王朝に神楽坂を出て朝から市貝で畑仕事、15:00くらいにメドを立てて片付けをし、お店に18:00~19:00の間に戻ってきて深夜まで仕事をすることを週に2~3回ほどやっています。

ここ数年は記録的な大雨による災害が日本全国区で起こっていて農業にも大きな損失が出て毎回ニュースになっています。そしてこの自然災害は昨年はヨーロッパで記録的な気温の上昇、冬にもかかわらず暖かい日が続く、でも局地的に大雨、場所を変えると干ばつ。ありとあらゆる自然災害が起こりました。日本も同じようですよね。ゲリラ豪雨はすでに当たり前になっています。自然災害は現状では良くなることはありません。むしろ酷くなる一方です。なので突発的に何かあったときに、毎回お店で仕事をしていて作物が心配になります。「何かあったときにすぐに駆け付けることができない。」という現状があります。駆けつけることができなく台無しになる可能性がるということです。

「体壊さないようにね!」お客様や知人が良く声をかけてくれて本当にありがたい限りです。僕も今年46歳になるので身体のことも考えないとなぁ・・・なんて考えてはいるんですけど、自分の好きなパブというお店で仕事をしながら、お客様方と話をする楽しさ。そして畑で何も考えずに畑仕事に没頭する楽しさ。この違う2つの楽しさが心地よく、だからやっていられるんだろうと思います。

現地スタッフが必要なフェーズに入る

仲間と草むしり

これまでは0.5反(150坪)の畑ですが、拡張をした市貝の畑だけでなく田んぼもあります。そしてメインのこの2つ以外に母屋近くに小さな田畑もあります。

メインとして柵付けするところで


畑 1.4反
田 1.5反


2つで約3反(900坪です)今までの6倍です。これ以外に約1反分(300坪)ほどの田畑がりますが、ここは直ぐには柵付けできないような場所なのでどうしようか悩み中です。

畑は耕作放棄地で木々が捨てられ草刈りやら古木の撤去やらやったことは以前のブログで書いたので読んでみて下さい。

よく1人でやってるなぁと自分でも思いますが誰かがいると「楽ができる」という考えではなく「何かができる!」という考えなので、今は現地で手伝付てくれる人を探そうと思っています。やはり現地の方が手伝ってくれることで交流も増えるし、僕の知らない市貝に事を聞くことができます。



そして、この章の前に書いた「何かあったときに・・・」直ぐに対応をしてもらえるという安心につながります。

日本の農業を考える。

高齢化

日本は先進国と言えるのかな?最近よく思います。何が先進何だろうとも。コロナ禍により世界情勢はまだ安定をしていません。戦争も始まり終わりが見えていません。飲食業をしているので食材の高騰には凄く敏感です。昨年から徐々に価格が高騰をし続けているなかで農業をしていて思うことは「喰えるぞ!」ということです。スタッフの食糧は確保できるでしょう。

日本の1人当たりの農地を他の国と比べると、ドイツやイタリアは6倍、イギリスは8倍、フランス13倍、アメリカ35倍、カナダ46倍、オーストラリアに至っては438倍もの差が生じています。さらに言えば日本は国内の食料自給率が低いということが問題視されますが、それはカロリーベースでの数字だからです。生産額ベースで計算をすると世界水準では無いですが、差はずいぶんと縮まります。

農林水産省の「知ってる?日本の食料事情2022」というページによると、日本の食料自給率関連の数字は次の通りになります。  

●食料自給率……38%(カロリーベース、生産額ベースでは63%)
●食料国産率……47%(カロリーベース、生産額ベースでは69%)
●飼料自給率……25%

まずは言葉の説明が必要です。

カロリーベース 
基礎的な栄養価であるエネルギー(カロリー)に着目して、国民に供給される熱量(総供給熱量)に対する国内生産の割合を示す指標

生産額ベース 
経済的価値に着目して、国民に供給される食料の生産額(食料の国内消費仕向額)に対する国内生産の割合を示す指標。

それでは先ほどのカロリーベースと生産額ベースを比べます。

カロリーベースの自給率
カナダ 266%、アメリカ 132%、日本 37%

生産額ベース
カナダ 123%、アメリカ 93%、日本 67%

海外との自給率を比べる際に一般的に低い方のカロリーベースを聞くことが多いです。その方がインパクトがありますし・・・しかし世界基準で考えるのであれば生産額ベースを基準にするのが一般的です。メディアはインパクトが欲しいからなのかカロリーベースの方を大々的に報道をしていると言えます。ただ、生産額ベースにすれば食料自給率は低くないとは言うものの、ある問題点の考えなくてはいけません。その問題は破棄される食糧です。実は供給されている食料のうち、なんと年間600万トン以上が廃棄されているという現実があります。一部「廃棄されている食料を考慮すれば、世界最低水準とはいえない。」と言っていますが、そういう問題ではないと僕は思っています。

聞きなれない言葉に「飼料自給率」があります。食料自給率が輸入畜産物の生産分を除いているのに対して、食料国産率は畜産の飼料が国産か輸入かを問わずに関係無く計算した数字になっています。なので「飼料自給率」という指標も参考にする必要が出てくるのですが、これは非常に低く25%しかありません。

そして、根本的な問題に「作物の種」があります。よく国産野菜は80%と言われますが、実は90%もの種は海外に依存している状況で、これの自給率は現状で8%しかありません。さらに2035年には4%になると言われています。

家畜の餌となる資料の生産が出来ないということです。ほぼ輸入に頼っているのが現状です。なので今回の戦争が大きく影響をして資料の高騰が続き酪農家さんが辞めるということに繋がるわけです。さらに牛乳が余っているからと国は牛を1頭殺傷すると15万円の補助金を出すとも言っています。大切に家族同然に育てた牛を殺すことで補助金を出すというのもおかしな政策だと思います。

自給率や種、家畜の国内での生産能力が将来的に非常に危険な状態にあるのは間違いりません。そこに拍車をかけたのがコロナ禍です。様々な国が食糧輸出規制をしたことです。種の供給すらも減ってしまったら、日本人の多くは食にありつけなくなる可能性が大きいという現実があるかもしれない、という農業の現実をもっと理解をしないといけないと思います。僕一人は大した力は無いけど、何か行動が必要です。そのための畑の拡張です。今の日本中の農業は高齢化過ぎます。

農業の衰退

耕作放棄地

2021年、僕が農業を始めた年のデータを農林水産省のホームページから見ることができます。「農林水産省 耕地及び作付面積統計」を見ると、日本の農地面積はこの55年の間に大きく減少していることが分かります。

<農地面積>
1965年……600.4万ヘクタール(畑:261.4万ヘクタール、水田:339.1万ヘクタール)
2021年……434.9万ヘクタール(畑:198.3万ヘクタール、水田:236.6万ヘクタール)

<農業従事者>
1965年……894万人
2021年……130万人


高齢化の話を少し前にしましたが、農地の面積以上に大きな問題がこの農業従事者の高齢化です。その数は6分の1にまで減少したという事実です。そこに年齢の問題も重なります。

<平均年齢>
2021年現在……67.9歳

もう70歳が目の前です。それくらいに高齢化が進んでいるといえます。つまり、農業自体の生産体制を下支えをする農業生産基盤の大きな衰退が、現在の食糧問題の原因になっていると言えます。

では、僕はそこで何ができるでしょう?

僕の考える農業

地域コミュニティ

僕は16歳から飲食業に足を踏み入れました。それ以前、幼稚園、小学校、中学校とすべて将来の夢はコックさんと書いていたくらい料理しか考えていませんでした。そんな僕がオテル・ドゥ・ミクニの三國シェフに興味を持ちフランス料理を始めひたすら洗い場、24歳で渡仏、有名なビストロで朝から晩まで料理だけを考えることのできる夢のような生活、でもバグパイプに出会いパブに興味を持ちフランス料理をパリで辞めました。帰国してパブで仕事をし2011年に神楽坂でスコッツマンを開業、2020年にコロナ禍になりましたが毎日お弁当を作りお店は基本的には営業をしていました。そして2021年。「食」ということを考えるようになり食育インストラクターの資格を取りました。でも、勉強をすればするほど現場に興味持ち、農業に足を踏み込みました。

現在、大手企業さんからアパレル業、様々な業種が農業に参加をしています。そこには企業ブランドとか裏が見え隠れするようなものあります。今や世界中が「SDG’s」という言葉を使いクリーン、エシカルなどの良いイメージを付けようとしている企業もあります。

僕もブランドとしてクリーンな方が良いなと思いますが、現場で誰よりも土をいじったり重労働をしていると物凄く地味なことを淡々と繰り返し泥臭くやるしかないんじゃないかと最近は思っています。そして、その姿を第三者が見て評価をすれば良いんじゃない。そういうものなんだろうと思っています。でも、これをきっかけに知ってもらうことができるのであれば、それはすごく良いことだと思うんです。

食料自給率や他の問題で難しいことは多くあります。でも、僕が農業を始め続けているのは「面白く魅力的だからです。」そうじゃないと往復6時間もかけて週に2~3回も行けないと思うんです。そして農業をすることが目的なのではなく、農業で生まれる地域コミュニティーに価値を感じるんです。そのコミュニティーに興味があり、その中に自分が入り地域に関わることです。

畑の予定

除草最中時の畑

英国展が終えたら、まずは一段階終了です。終わってみたらもう3月も下旬に向かいます。あっという間です。そして4月下旬からゴールデンウィーク前には定植を終える予定です。そこまではちょっと落ち着かない日が続きます。

それでも畑と店舗を行き来しながらの生活が再度戻ってくる楽しさもあります。季節も良い感じになってくる頃なので畑仕事も気持ちいいはずです。もしかしたらゴールデンウィーク後はゲリラ豪雨や猛暑に見舞われる時期に入る可能性もあります。異常気象はもう異常気象じゃなく通常と考えた方が良いなと。

そういうときの対策のためにも現地、市貝でお手伝いをしてくれる人を探す必要があります。農業をしたい人じゃなくても農業をからめて地域で何かしたい人、その過程で農薬も化学肥料も使わないで農業を行い、加工をして流通させ販売をする。つまり六次化です。何に興味がありしたいのかは実際に話をしないと分かりませんが、そういうことに興味のある市貝に住んでいる方だったら最高ですね。

やはり、地元の誰かと関わりながら農業をしていきたいです。


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